新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者への支援は全国で色々な取り組みがされています。
私の会社のある島根県出雲市では、事業継続を図るために新事業・新展開へ取り組む経費の一部が最大50万円まで補助される「出雲市中小企業等新事業展開支援事業補助金」が展開されています。
詳細は→ https://www.city.izumo.shimane.jp/www/contents/1615246831930/index.html
補助金は借入(借金)ではないので、不正さえしなければ、採択されると申請した金額がもらえる訳で、使わない手はない、と考えます。
しかし、補助金の申請・使用には以下のデメリットもあります。
・必要経費を先に支払う必要がある
・申請書の作成が面倒、よくわからない
これらの課題さえ解決できれば、事業に必要なお金が補助(2/3や3/4など補助金によって異なる)されるので、補助金は中小企業こそ積極的に活用すべきです。
そこで今回は「採択される」申請書の書き方を説明していきます。
記事の最後に、実際に採択された申請書を配布していますので、参考にしてください。(売上など数字は削除しています)
出雲市の補助金だけではなく、小規模事業者持続化補助金の申請の参考になります。
目次
申請書の書き方のポイント
補助金は基本的に税金を財源として使用しますので、厳しい審査があります。
誰でもほいほいお金をくれる訳ではありません。
そこで、申請書を書く際に必ず押さえておきたいポイントを紹介します。
1. 読む人(審査官)は別分野の人と思って書く
あなたの事業分野では当たり前のことが、読み手にとっては当たり前ではありません。
また、業界用語や専門用語も通じると思わないことです。
素人の人が読んでも理解、納得ができるような説明を心がけましょう。
2. 補助事業後に「儲かる」こと
補助金の趣旨は、「企業の継続を支援」です。
補助金を交付したものの、会社が全然成長していない、または倒産した、となっては無意味なのです。
補助金をもらって行う事業を「補助事業」と言いますが、補助事業を実施した結果、売上がUPする、その結果、利益が出る、という内容でなければ審査官は税金を使おうとは思いません。
利益が出ると言うことは、将来的には雇用に繋がる、など社会貢献にも繋がります。しっかりと「儲かる」計画を練りましょう。
3. 理由はデータに基づき積極的に数字を使おう
上述の2では儲かる計画の必要性を説明しました。
しかし、それが机上の空論であっては審査官は納得しません。
「なぜ儲かる」のかという理由と共に説明をしますが、理由はデータに基づくのがベストです。
競合他社・競合品との比較、市場調査など、具体的な数値を利用しながら説明をしましょう。
4. 図やグラフを使い視覚で訴えよう
ダラダラと文字だけがずら~っと並んだ書類。
あなたは見る気がしますか?
ましてや、審査官は何十、何百もの申請書を読むのです。
文字だけが延々と並んだ書類で嫌気が差すことだってあります。
審査官に伝えたい内容を的確に伝えるためにも、図やグラフを用いることは効果的です。
例えば、売上のデータを説明するときに
【文字で説明】
2019年は1000万円あった売上が、2020年はコロナの影響で500万円まで落ち込みました。2021年は若干の回復があったものの、700万円程度となり、コロナ前の売上回復が難しい見込みです。
【グラフで説明】
このように増減などはグラフの方がわかりやすいですよね。
注意点としては、3Dにしたりカラフルにするなど、すごく派手にしたりこだわる必要はないと言うことです。
申請書ではせいぜい3色を使う程度で十分です。
伝えたいところだけを赤文字にするなど、思いが伝わりやすい体裁を心がけましょう。
5. ちゃんと実行できることを示す
いくら素晴らしい計画を立てても、それが補助金の交付期間内に完了できるのか、は大切な要素です。
全ての補助金には、事業完了の報告をする期限があります。
その期限内に申請した内容をしっかりと実行できるのか、が大切なポイントです。
では、どのように実行可能を示すのか。
それは、綿密なスケジュールを記載することです。
補助金が採択されてから事業を開始し、事業完了までの数ヶ月間をスケジューリングしてみましょう。ここでも図を使うとわかりやすいですよね。
■簡単でもいいのでスケジュールを図示した方がよい
スケジューリングをする、と言うことは、事業で行う作業を明確にする必要があります。
スケジューリングの過程でより細かく作業を落とし込めるので、計画としての妥当性と説得力が増す効果もあります。
書き方のさらなるポイント
私が「鉄板」としている申請書の骨格の流れを紹介します。
補助金の申請書によっては順番が前後することもありますが、今まで全ての補助金は大まかには以下の流れを鉄板として来ました。
1.自社の概要
大まかに自社がどのような事業を行い、取り扱う製品やサービスの内容、売上、会社の規模を紹介します。
2.行う補助事業の説明
どんな事業を行うのかを簡単に説明しましょう。
説明の際には、その補助事業は自社の事業の延長なのか、別の新規事業なのかを明確にします。
3.自社を取り巻く環境の説明
例えば、観光業界は新型コロナウイルス感染症の影響で売上は前年比80%以上も激減しています。のように自社の業界における現状や、地域(競合店など)の状態を説明します。これはネットで調べると様々なデータが出てきますので比較的簡単ですよ。
4.自社の課題と補助事業の必要性
3で調べた環境に対して、自社で現在どのような課題があるのか、を自己分析して書きます。大きく3つ程度書けば大丈夫です。
そして、その課題解決のために、補助事業がどのような役割を果たすのか、補助事業の必要性を書きます。
経験やノウハウを別分野で活用して売上増加を目指す、など最終的には売上増加に繋がるようにすることが多いです。
5.補助事業の具体的内容
ここで、どのようなことにお金を使うのか、を明確にします。
例えば、ホームページを作成する、にしても、具体的にどのようなページなのかをしっかりと落とし込みましょう。ページ数、機能、などです。
補助事業でお金を使う内容全てにおいて、具体的な内容を記載します。
6.補助事業でもたらされる効果
お金をかけた結果、それはどのようなメリットがあるのか、を記載します。
メリットにも大きく2種類あります。
・自社のメリット→どのような課題が解決される、など自社に対してのメリット
・利用者へのメリット→その補助事業で自社以外の人たちにどのような恩恵があるのか。見落としがちな項目ですが、こちらのメリットの記載の方が大切です。
上記メリットを2つとも、5で記載したお金を使う全ての項目に関してそれぞれ記載をしましょう。
7.補助事業のスケジュール
具体的に内容が決まれば、あとはその内容1つ1つに対して、誰が・いつまでに完了させるのか、というスケジューリングを書きます。
8.補助事業への協力者と有用性
もし補助事業で誰か協力者(社)がいれば、同意をいただいて記載します。
事業により一層の信憑性と必要性をもたせるために、私は以前、大学教授からコメントをいただいたこともあります。
4~6で書いた内容は自分で書いたものであるため、あくまでも主観的なものだと判断されがちです。ここで、しっかりと客観性を担保しましょう。
9.収益計画
補助事業によって具体的に売上がどのように増加するのかを記載します。実はここが1番難しいところだと考えます。
私の場合は、市場規模からその市場で動く全体のお金を調べ、事業がターゲットとする地域や年代層の人口を割り出します。
そこで単純に日本人1億3000万人に対してターゲット人口の割合で金額を算出しています。さらにストレスとして3割は減らすので、0.7を掛ける、としています。
伸び率も市場の過去の伸び率を用いる、など数値に基づく算出方法を使用しましょう。
10.補助事業によってもたらされる副産物
事業成功による雇用の創出、既存業務の効率化など、補助事業を実施したことによって生まれる副産物も考えてみましょう。
これにより、会社の状況が底上げされる、という説明の根拠になりますよ。
以上が私が「鉄板」としている申請書の書き方の骨組みです。
補助金によって前後はありますが、上述1~10の項目は全て盛り込むようにしています。参考にしてみてください。
採択された申請書
実際に申請をして、採択された申請書を例として見るのが最も参考になるかも知れません。
私自身もたくさんの申請書を見てきました。
ネットで調べれば、申請書で採択された例などたくさん出てきます。
1つでもたくさん見て参考にすることで、より採択されやすい申請書を書くことができますよ。
私が書いて実際に採択された出雲市中小企業等新事業展開支援事業補助金の申請書を公開させていただきます。
以下からご覧ください。
実際の申請書を見てみる